はじめに
近年、家族葬を選ぶ人が増えています。かつて日本の葬儀は、地域や親族、仕事関係者など多くの人が集まる「一般葬」が主流でした。しかし、社会の変化とともに、小規模で執り行う家族葬が普及しています。
では、なぜ家族葬は増えているのでしょうか?本記事では、日本の葬儀の歴史と家族葬の変遷について解説し、今後の葬儀のトレンドを考えます。
1. 日本の葬儀の歴史
■ 昔の葬儀の形(江戸時代〜昭和初期)
日本の葬儀は、もともと地域や寺院と深く結びついた形で行われていました。
- 亡くなったら村や町全体で弔う
- 寺院が葬儀を執り行い、檀家制度と結びつく
- 葬儀は自宅で行われることが多く、親族や地域住民が集まる
■ 戦後の高度成長期(昭和30〜50年代)
戦後、日本は高度経済成長を遂げ、都市化や核家族化が進みました。それに伴い、葬儀の形も変化していきます。
- 葬儀が自宅から「葬儀会館」で行われるようになる
- 会社関係者や近隣住民を招く「一般葬」が主流となる
- 大規模な葬儀が一般的になり、派手な演出も増える
■ 1990年代以降の変化
バブル崩壊後、日本の社会構造が変わり始めました。葬儀の簡素化や個別化が進み、家族葬のような新しい形が登場します。
- バブル経済の崩壊で「豪華な葬儀」から「質素な葬儀」へ移行
- 少子高齢化が進み、参列者の減少が目立つ
- 「親しい人だけで静かに送りたい」という価値観が広がる
2. 家族葬が増えている理由
■ 1. 核家族化と少子高齢化
現代日本では、家族のあり方が変化しています。
- 親族が全国に散らばり、集まりにくくなった
- 高齢化により、葬儀の参列者が減少
- 子どもの数が減り、喪主の負担が増加
こうした背景から、「小規模な葬儀の方が適している」と考える人が増えました。
■ 2. 経済的な負担を抑えたい
家族葬の普及には、葬儀費用の高騰も関係しています。
【葬儀の平均費用】
葬儀の種類 | 平均費用 |
---|---|
一般葬 | 100万〜300万円 |
家族葬 | 50万〜150万円 |
「無理に大きな葬儀をしなくてもいい」と考え、経済的な負担を抑えられる家族葬を選ぶ人が増えています。
■ 3. 価値観の多様化
現代では、葬儀に対する価値観が大きく変わりました。
- 「形式にとらわれず、自由な葬儀をしたい」
- 「家族だけで、静かに送りたい」
- 「宗教的な儀式にこだわらない」
こうした考え方の変化が、家族葬の増加を後押ししています。
■ 4. コロナ禍での影響
新型コロナウイルスの流行により、大規模な葬儀が難しくなり、家族葬がより一般的になりました。
- 感染リスクを避けるため、少人数で葬儀を行うケースが増加
- 遠方の親族が参列できず、オンライン葬儀が普及
- 「身内だけで十分」と考える人が増えた
3. 家族葬の今後
■ 1. さらに増加する可能性が高い
今後も、家族葬の割合は増加し、一般葬の比率は減少すると考えられます。
■ 2. オンライン葬儀の普及
遠方の親族や高齢者が参列しやすいよう、オンライン葬儀がさらに普及するでしょう。
■ 3. 自然葬・樹木葬の増加
葬儀の簡素化とともに、樹木葬や散骨などの自由な供養方法を選ぶ人も増えています。
まとめ
家族葬は、日本の社会構造や価値観の変化に伴い、近年急速に普及しています。
【家族葬が増えた理由】
- 核家族化と少子高齢化により、参列者が減少
- 経済的負担を抑えたい人が増えた
- 自由な葬儀を求める価値観の変化
- コロナ禍で少人数の葬儀が一般的になった
今後も、家族葬は主流な葬儀の形として定着し、新しい供養の形がさらに広がっていくと考えられます。