はじめに
日本では仏教式の葬儀が一般的ですが、神道にも「神葬祭（しんそうさい）」と呼ばれる独自の葬儀の形式があります。神道の家族葬を行う際には、仏教式との違いや儀式の流れを理解しておくことが重要です。本記事では、神道の家族葬の流れや注意点について詳しく解説します。
神道の葬儀「神葬祭」とは？
神葬祭は、神道の教えに基づいた葬儀のことで、仏教の「葬儀」に相当します。神道では死を「穢れ（けがれ）」と考えるため、仏教のような読経や戒名はなく、「霊を清め、故人を祖霊として祀る儀式」が中心となります。
【仏教の葬儀との違い】
| 項目 | 神道（神葬祭） | 仏教（仏式葬儀） |
|---|---|---|
| 死の捉え方 | 穢れ（けがれ）と考え、祓い清める | 輪廻転生の一部と考える |
| 葬儀の名称 | 神葬祭（しんそうさい） | 葬儀・告別式 |
| 戒名 | なし（諡名＜おくりな＞を授与） | 僧侶から戒名を授かる |
| お経・祝詞 | 神職が「祝詞（のりと）」を奏上 | 僧侶が「読経」を行う |
| 供物 | 米・塩・酒・魚・野菜・果物 | 線香・香花・供物 |
| 焼香 | 玉串奉奠（たまぐしほうてん） | 焼香 |
神葬祭の流れ（家族葬の場合）
神葬祭は、仏式の葬儀とは異なり、「死の穢れを祓い清め、故人の魂を祖霊として祀る」ことを目的としています。家族葬の場合は、簡略化することも可能ですが、基本的な流れを押さえておくことが大切です。
1. 帰幽奉告（きゆうほうこく）
故人が亡くなったことを神棚に報告する儀式です。「神棚封じ」（神棚を白紙で封じる）を行い、喪に服します。
2. 枕直しの儀（まくらなおしのぎ）
故人を清め、霊璽（れいじ・仏教でいう位牌）を用意します。
3. 納棺の儀（のうかんのぎ）
故人の遺体を棺に納め、榊や塩で清めます。
4. 通夜祭（つやさい）
故人を偲ぶために神職（神主）が祝詞を奏上し、玉串を奉る儀式を行います。
5. 葬場祭（そうじょうさい）
仏教の「告別式」にあたる儀式で、神職が祝詞を奏上し、玉串奉奠を行います。これにより、故人の霊が祖霊となり、守護神として家を見守ると考えられます。
6. 火葬祭（かそうさい）
故人を火葬する際に、簡単な祝詞をあげる儀式です。
7. 帰家祭（きかさい）
火葬後、遺族が帰宅し、身体を清める儀式です。仏教の「精進落とし」に相当します。
8. 霊前祭（れいぜんさい）
仏教の「四十九日」にあたる儀式で、故人を祖霊として正式に祀る儀式です。
神道の家族葬の注意点
1. 服装は仏教の喪服と同じでOK
神道の家族葬でも、喪服（黒のスーツ・ワンピース）が一般的です。ただし、神社では死を「穢れ」とする考えがあるため、神職によっては喪服を着用しないよう求める場合もあります。
2. お供え物は「酒・塩・米・魚・野菜・果物」
仏教の供物（線香・花など）とは異なり、神道では米・酒・塩・魚・野菜・果物が供えられます。香や線香は使用しません。
3. 焼香の代わりに「玉串奉奠」
神葬祭では、焼香の代わりに玉串（榊の枝）を神前に供える「玉串奉奠」を行います。
4. お布施は「御祭祀料」として包む
神葬祭では、「お布施」ではなく「御祭祀料（ごさいしりょう）」という名目で、神職に謝礼を渡します。金額の相場は以下の通りです。
- 通夜祭・葬場祭：5万円〜10万円
- 火葬祭：3万円〜5万円
- 霊前祭（四十九日相当）：3万円〜5万円
のし袋は白無地のものを使用し、水引は黒白または黄白が一般的です。
まとめ
神道の家族葬「神葬祭」は、仏教の葬儀とは異なり、「死の穢れを祓い、故人を祖霊として祀る儀式」が中心となります。神道独自の作法があるため、事前に神職と相談しながら準備を進めることが大切です。
仏教式とは異なる点を理解し、故人の意志や家族の希望に沿った形で、適切な神葬祭を執り行いましょう。
